花ちりし
- み みな
- 2015年6月24日
- 読了時間: 2分
花ちりし あとの枯葉や 墓椿
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春はまだ来ない。
風はまだ冷たく、土は未だ霜を作っている。
ため息をつけば、それは白く宙を舞った。
もう三月だというのに。
辺りを見回しても、春を告げるもの…いや、それ以前に冬を伝えるものすらなかった。
樹の一本すら存在しない平地。そこに一人、俺は立っていた。
なんでこんな所にいるんだ?
どうしてこんな広い場所に、俺は一人でいるのだろうか?
春はまだ来ない。
ああ、俺は春を探しに来たのか。
白い花だ。うっすらと桃を宿した。純粋で。それでいて、儚くて。
か弱くて。眩しくて。揺れて。散って……。
それから?
記憶を巡らせたとき、それは音をたてた。
ぼとり。
赤い赤いそれは、霜に濡れた足元に落ちていた。
「椿だ」
ずいぶんと古びていたのか、花弁はところどころ変色し、葯は卑しく黄色に色づいている。
それでもなお花としての形を保つそれに恐怖と同時に、美しさを感じた。
まじまじと見つめていると、またどこかで、音が聞こえた。
ぼとり。
椿の花は春の訪れと共に朽ちていく。
ああそうか、春はもうすぐ来るのではないか?
落ちる椿を数える間に、いつの日か。
はらはらと散る、その花を最後に見たのはいつだったか。
春の生ぬるい靄に包まれたような、おぼろげな記憶を瞼の奥にうつし、
そして俺は、眼前に広がる朽ちた椿を数え始めた。
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