葉(よう)のさきから
「18番街を抜けた先に ぽつんと聳える黒い黒い街灯がありました
街灯は毎日道はずれの通りを歩く人々を眺めていました
家路につく人や子供たち
山高帽を被る老人を見つめ
老人は 街灯に集う虫の羽音を聴いていました―――」
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葉のさきから溢れる記憶は、どうしても消えない。
どうして消えないのでしょうか。
「それは、ここに在り続けるからだよ。記憶はどこにも行かない。
僕がそれをここに留めている。」
ならば、これは過去ですか?
「そうなるね」
ではこれは、記憶でしかないのですか?
「心外だな、それは記憶が悪いみたいじゃないか。
記憶は見たもの感じたものが素直に出てくるんだ。最も美しい形でね。
記憶はどこにも行かなくても、永遠に変わり続ける。誰かの心に触れてしまえば。
美しいものじゃないか。」
誰かの心に触れる。
「記憶と過去は繋がっている。今僕と君はここにいる。これは過去だ。
ならば君は?君は誰といる?」
あなたといる。
「それが記憶だ」
記憶。
私の記憶は、どこにありますか。
あなたは私の記憶を、どこに留めておりますか。
「……。
記憶はいくらでも いくら経っても過去の中にあるのに、
これから先の記憶はどこにもないのは、どうしてだろうね?」
わからない。
私は、葉のさきから、追憶を繰り返す。