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人形

  • 執筆者の写真: み みな
    み みな
  • 2016年2月13日
  • 読了時間: 1分

魂をもった死体は、果たしてほんとうに死んでいるのか?

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散乱する人形は動くことをさも知らなかったように横たわっている。 それは物なのであろうか。かつて、彼らは生をもって、動いていたはずなのだ。 街は色づいていた。人形達は街を駆け回り、笑い、歌っていた。私という存在に目を向けることもなく。ただ、自分勝手に。無造作に。無遠慮に。けたたましく。 「ぼくは取り残された。みなと共に逝けなかった。」 さめざめと悲しむ人形に涙を流す瞳はない。 それは物なのか?彼は泣いていて、今にも涙をこぼしそうだ。 こんなに感情があるのに、彼は物なのだ。彼を遺して逝ったほかの人形たちは、かつて動いていたことを忘れて、物へと成り果てている。その姿は残酷だった。 太陽の差した光がやがて傾き、しんと静まった静かな夜が来たような。 黄昏時はあっという間であって、感慨に更ける暇をも与えなかった。沈む直前は、我々の記憶には存在しない。 強く脳裏に焼き付いたものは、暖かい陽の当たる昼の時間と、今肌に感じる夜の冷たさ。 私はかつてその死体の中にいたであろう魂を探して、ただ虚空を見つめていた。この人形は、見る価値もなく、ただの「物」なのだ。

 
 
 

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