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  • 執筆者の写真: み みな
    み みな
  • 2020年2月11日
  • 読了時間: 2分

 おもむろに彼女の蟀谷に手を伸ばし、彼女の輪郭をたどる。目蓋をなぞり、頬に触れると、彼女はじっと目を閉じて、僕の手に身を預けている。その姿が、僕のどこか深いところにある何かをざわつかせた。否定、不安、諦観、愛情、侮蔑、依存、悲哀、憐憫、嫌悪、羨望…。そのどれでもなければ、全てが混ざっているような、ひどく歪んだ感情だった。それを振り払うように、あるいは受け入れるように、やがて僕の手は彼女の首筋に及び、そっと掴んだ。

 力は入れなかった。これが彼女の首でなければ、陶器を持ち上げるように自然に思える行為だった。自分でもどうしてこんなことをしているのか分からなかった。

 彼女はわずかな違和感に気づくと、静かに目を開き、僕の手と顔を交互に見た。そして自分の状況を見据えると、僕の目をじっと見つめて、そして泣きそうなほど哀しそうに笑った。

 彼女の潤んだ真っ白な瞳は確かに僕を透かして、僕の歪んだ感情を見上げている。それは未だ見えない僕を探り出すようにも見えれば、僕の全てを理解しているようにも見えた。

 濁りきった水が真水に溶けるような感覚だった。腐った土が、石が、植物が、死骸が、清らかな液体を侵食する。汚染する。それは浄化などではない。

 僕が溶かされていくことに心地よさを感じつつも、彼女が僕によって汚れていく気がして恐怖した。その蟠りが、また新たに僕の心を濁らせていく。そうしてまた彼女はその心も溶かして…それが続く。このまま彼女に甘え続けてしまえば、いずれきっと彼女も濁ってしまう。澄みきった彼女を僕が蝕んでいく。

 僕は伸ばした手のわけを理解して、自嘲するように小さく笑った。

 僕は救いを求めていた。

 
 
 

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